書き方コンサルタントのふじいみほです。
「過去と未来をつなぐライフヒストリー」と題して、私の半生を辿っています。
卒業間際に、いつの間にやら女子の間で発生するのが「サイン帳」でした。
A5版くらいの横長の紙に、ひとりずつプロフィールや好きなこと、卒業するので友達へのメッセージなどを書いていくものです。
(男子はこういうのあったんだろうか?)
誰に渡して誰に渡していない、となると、これまた面倒なので、基本的にはクラスの女子全員にはお互いにお願いしていたと思います。
クラスの中で身長が高い女の子がふたりいると、「小学校6- はまった音楽」で書きました。
そのうちのひとりは、TMネットワークを教えてくれたマリコちゃん。
もうひとりの背が高い女の子は、たしか、キヨミちゃんという名前だったと思います。
彼女はすごくおとなしい子で、あまり話したことがありませんでした。
そのキヨミちゃんともサイン帳の用紙を交換して、書いてもらったんです。
返ってきたキヨミちゃんの内容を見てみると……
好きなアーティスト(当時は芸能人と書いていたのか?)に、
「Kiss」
と書いてありました。
私は初めて見る単語に反応して、すぐに彼女に聞きました(その頃、Kissの存在を知らなかったので)。
彼女は、
「これは海外のバンドなんだよ」
と教えてくれました。
「なんで知ってるの?」
と聞いたら、
「お兄ちゃんが好きだから、私も好きになったの」
と、話してくれました。
「海外のバンド」
というのと
「お兄ちゃんから教えてもらった」
ということがすごく新鮮で、
「もっと早くキヨミちゃんと話をしておけばよかった!」
と思いました。卒業後は違う中学校へ行くことになっていましたから。
背が高くて、おとなしい、私にとっては大人っぽい清美ちゃんが、いつもよりさらに大人っぽく見えました。
私はきっと好奇心いっぱいの目で、彼女を見ていたと思います。
卒業でよくあるものが、文集ですよね。
卒業アルバムとは別に、各クラスで作るやつです。
テーマもよくあるやつで、「将来なりたいもの」でした。
正直、何になりたいとか、あまり強い希望も夢も持っていなかったので、何を書くかちょっと悩みました。
書けと言われたので書かなければならず、「まぁ、しいて言うなら」といった感じで、「イラストレーターになりたい」と書いたのです。
みんなの原稿が集まり印刷され、まとまった「卒業文集」という形で渡されたものは、当然、親も読むわけです。
私が書いたものを読んだ母親は、こう言いました。
「イラストレーターなんて、ユイちゃんみたいに絵がうまくなきゃなれないわよ。食べていけないんだから」
ユイちゃんというのは、5年生の頃に転校してきた女の子で、とっても絵が上手でした。
なので、母が言うのはごもっともなんですが、障害児学級の担任とは言え、小学校教師なんですから、(なんで子供の夢をつぶすようなことを言うのかなぁ?)と思いました。
(書けって言われたから、むりやり書いたのに……)
母はよく、「家庭が社会の第一歩なのよ」ということを冗談交じりに言っており、なかなか厳しい人でした。
ケント紙やGペン、丸ペンまで買って、マンガの真似っこをしていましたが、自分の絵の程度も何となくわかってきて、とどめが母の言葉でした。
こうして、絵を描くということは、小学校卒業と同時に、自分の中でも将来の仕事の選択肢から完全に削除されたのです。
(つづく)
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