書き方コンサルタントのふじいみほです。
「過去と未来をつなぐライフヒストリー」と題して、私の半生を辿っています。
* * *
イラン現地研修を話す前に。
第2外国語でペルシャ語を選択した私たちは、大学ではどんな授業を受けていたかというと―――
文法や読解を日本人の先生が、会話の授業をイラン人の先生が担当していました。
ネイティブ・スピーカーのP先生は、背が高く恰幅がよくて、いつも姿勢がピシッと伸びていて、声が大きい先生でした。
イラン人の男性は、髭を生やしていることが多く、このP先生も髭を生やしていました。
ペルシャ語を選択する学生が少なかったため、20人程度が入るような小さな教室を使っていました。
このP先生、決して嫌な先生ではないのですが、なんせ声が大きくて豪快な人なので、学生によっては怖いイメージがついてしまいました。
ペルシャ語という初めて学ぶ言葉がまだ全くわからない、その中で先生の質問に自信なさそうに答える。
そうすると、ただでさえ小さい声がさらに小さくなってしまいます。
すると、P先生は当然「え? なんて言ったの?」と聞き返します(もちろん、ペルシャ語で)。
先生自身は普通に聞き返しているのですが、学生のほうは何と言われたか理解できないので、声の感じだけで、「えっ!? お前、何言ってるんだ!!」と怒られたように受け取ってしまい、「え? なに? 私、間違えたの!?」とパニックしてしまうのです。
なかなか意思疎通ができずに、かわいそうな状況に陥るのが常でした。
特にそんな状況になることが多かったYちゃんは、
「私、何が怖いって、エレベーターの中で、4人のP先生に囲まれるのが一番怖い!!」
と言っていたことがありました。
どんな想像なんだか……。
気持ちはわかりますけどね。(^_^;)
でも、先生の立場に立てば、根気よく学生につきあってくれていたのだと思います。
いつ誰に教わったのかわかりませんが、先生がよく使う日本語は、「ナマケモノ~」でした(動物のナマケモノではなくて、人間の怠け者)。
「モ」のところにアクセントがついて、いかにも外国人が話すような日本語で、その単語を言うたびに「ハッハッハッ」と豪快に笑っていました。
(日本に長く住んでいる割には、日本語を覚えようとはしなかったみたいで、ほかの日本語を聞いたことがありませんでした)
「ナマケモノ~」と言われる人は決まっていて、3年浪人して入ってきたA君。
アルバイトで忙しいのか、本当にナマケモノなのか、ペルシャ語の授業も欠席や遅刻が多かったのです。
でも、男同士で気が合うのでしょうか。
A君があまり答えられなくても、「ハッハッハッ、ナマケモノ~!」とP先生は笑っていました。
その瞬間は場がなごむので、きっとさきほどのYちゃんなどは、ひとときのオアシスを感じていたのではないかと思います。
ちなみに、ペルシャ語でナマケモノのことを「タンバル(tambal)」と言います(「バ」にアクセントが付きます)。
A君がいち早く覚えたペルシャ語は、もちろんタンバルでした。
(つづく)
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