書き方コンサルタントのふじいみほです。
「過去と未来をつなぐライフヒストリー」と題して、私の半生を辿っています。
* * *
前回は、ネイティブスピーカーの先生が迫力があって怖かった、という話をしました。
「エレベーターの中で4人のP先生に囲まれたくない!」
というYちゃんだけでなく、ペルシャ語を選択している学生全てに、
「イラン人とはあのように迫力がある人が多いのか!?」
という懸念がありました。
この頃はまだインターネットがなくて、Windowsすら世の中になかった時代です。
イランについて、私たちは本と教授の話でしか知ることができていませんでした。
そんな状態で3週間もの現地研修に行き、イランの大学でペルシャ語の授業も受けるのですから、
「現地の人が、みんな、P先生みたいだったらどうしよう!?」
と不安になるのも仕方がないかもしれません。
その一方で、イランへの現地研修を現実化させ、引率もしてくれるというH教授は、
「大丈夫だよ~」
とニコニコしつつ、バタバタと準備に追われているのでした。
男子学生と違って、私たち女子学生は大事な準備がありました。
それは、スカーフとコートです。
イランはイスラーム教を国教としており、女性は人前では首、手首、足首までと髪を隠し、体の線がわかるような服装をしてはいけないのです。
よく、「顔を隠してたの?」と聞かれることがありますが、イランでは顔までは隠さなくても大丈夫でした。
スカーフをかぶって髪と首を隠し、基本的にはパンツ(ズボン)をはいて、その上にひざ丈くらいのコートを着れば街を歩けます。
テヘランは日本の東松山市(埼玉県)と同緯度です。
(関越高速道路を走っていると、テヘラン、ラスベガス、東松山が同緯度であるという標識が出てきます)
11月だと気温もだいたい同じで、普通にコートを着ていられます。
日本からトレンチコートをそのまま着ていった人もいました。
日本を発つまでは、色々な人に色々なことを言われました。
「水はもちろんだけど、氷は気を付けなよ! うっかり飲んじゃうからね」
とか、
「道路を渡る時は、前の人についていくといいよ」
とか。
当時、アルバイトでお世話になっていた歯医者の院長からは、
「ボク、キャビア好きなんだよね!」
と何気ないアピールをいただきました。
出発する前から、すでに珍道中の気配が濃くなっているイラン現地研修。
果たして……。
(つづく)